Ann Burtonの歌を最初に聴いたのは、同期で入社した奴が私に聴いて欲しいと置いていったカセットテープでだった。
そいつは根っからのジャズファンで、ブルース/ロックファンの私とでは聴いている音楽のジャンルは違えど、お互いオーディオファンということもあり、頼めばブルースもかけてくれるジャズ喫茶で仕事帰りに酒を飲んだものだった。
その彼が家業を継ぐために故郷に戻る事になり、私に聴いてくれと置いて行ったのだった。
そのカセットテープに録音されていたのが、このBlue Burtonだった。私はこれを聴いて直ぐに彼女の歌の虜になった。
最後の1曲がSanny、かつてCherが歌って一世を風靡したポップチューンなのだが、最初からこの最後の1曲まで、英語がネイティブではないヨーロッパ人の英語はわれわれ日本人でも聴き取り易く、全ての曲の一言一言が心に沁みてくるようであった。
もう音質の良くないカセットテープでなんか聴いてはいられない、直ぐにレコード店に走った事は言うまでもない。
ジャケットを見ながら、いやーぁ、おばさんやなと思いながらも、このBlue BurtonとBallads & Burtonを買った。以来この2枚は、私の中でジャズボーカルの名盤として存在している。
Cherが歌った曲はもう1曲、Bang BangがBallads & Burtonに収録されている。以後CarpentersやCarole King等、その時のポップなヒット曲を自家籠中に歌いこなすなど、選曲の妙が伺えたものだ。
その後、Ann Burtonのレコードはほとんど買ったが、CDで買い直したのはこのBlue BurtonとBallads & Burtonだけである。
彼女は日本人の侘び・寂びに通じるような感情の表現をするためか日本のジャズファンには人気が高く、そのせいか彼女自身も日本贔屓だったため、何度も来日してレコーディングを行った。70年代末のダイレクトカッティングが流行った頃、ボーカルでダイレクトカッティングを行った事にもびっくりしたものだった。
さて、しっとりとしたバラードで人気を得たAnn Burtonだったが、実は小粋にスイングする歌い方も得意としていたのだ。
上記2枚の他にお勧めしたいレコードといえば、やはり六本木のミスティでのライブだろうか。今となっては伝説とも言えるジャズクラブでのライブは、残念ながら実際に聴いた訳ではないのだが、在りし日のミスティを知っている人間にとってはレコードを聴けば容易にそのライブの様子が想像できる。
ここでは初期の2枚のレコードにはない乗りが感じられるだろう。
Ann Burton、本名Johanna Rafalowicz。俳優Richard Burtonが好きでこの芸名を使っていたと言う。1989年11月29日、故郷アムステルダムにて没す。
私にとっては初めて女性ジャズボーカルの魅力を教えてくれたシンガーだった。
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5 comments:
詳細な情報で聞きたくなり
さっそくアマゾンで2枚のCD注文しました
(アフィリエイト掛かってれば..)
最近欲しいCDなんて無かったのですが
到着がたのしみっす
今回Amaoznを眺めていたら、1枚買おうかなと思ってしまいました。
1980年前後にダイレクトカッティングされた2枚のレコードが、CDで1枚になり、おまけ付きで出ています。
He's Funny That Wayがそれで、おそらくかなり良好な音質だと思います。
当然LPでは持っている訳ですが。
Blue BurtonとBallads & Burtonも1960年代の録音としてはかなり良い方ですよね。
あのピアノの空間感が素晴らしいと思っています。
Yes she was a good singer.
突然ですが、kantoshiさんて昔FOBで音楽班としてレコード評やってたkan104さんでしょうか?
文体、ロックやジャズの話題、六本木ミスティの話、ちょっとそんな気がしました。
違っていたらごめんなさい。
今でもテレキャスター使っていたらうれしいな。
検索人さん、かなり昔の話、良く覚えていらっしゃいますね。
どんなハンドルネームを使ってらっしゃいました?
今でも参加されているのですか?
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