Sunday, November 29, 2009

Ann Burton、没後20年

Ann Burtonの歌を最初に聴いたのは、同期で入社した奴が私に聴いて欲しいと置いていったカセットテープでだった。
そいつは根っからのジャズファンで、ブルース/ロックファンの私とでは聴いている音楽のジャンルは違えど、お互いオーディオファンということもあり、頼めばブルースもかけてくれるジャズ喫茶で仕事帰りに酒を飲んだものだった。
その彼が家業を継ぐために故郷に戻る事になり、私に聴いてくれと置いて行ったのだった。

そのカセットテープに録音されていたのが、このBlue Burtonだった。私はこれを聴いて直ぐに彼女の歌の虜になった。
最後の1曲がSanny、かつてCherが歌って一世を風靡したポップチューンなのだが、最初からこの最後の1曲まで、英語がネイティブではないヨーロッパ人の英語はわれわれ日本人でも聴き取り易く、全ての曲の一言一言が心に沁みてくるようであった。

もう音質の良くないカセットテープでなんか聴いてはいられない、直ぐにレコード店に走った事は言うまでもない。
ジャケットを見ながら、いやーぁ、おばさんやなと思いながらも、このBlue BurtonとBallads & Burtonを買った。以来この2枚は、私の中でジャズボーカルの名盤として存在している。
Cherが歌った曲はもう1曲、Bang BangがBallads & Burtonに収録されている。以後CarpentersやCarole King等、その時のポップなヒット曲を自家籠中に歌いこなすなど、選曲の妙が伺えたものだ。

その後、Ann Burtonのレコードはほとんど買ったが、CDで買い直したのはこのBlue BurtonとBallads & Burtonだけである。
彼女は日本人の侘び・寂びに通じるような感情の表現をするためか日本のジャズファンには人気が高く、そのせいか彼女自身も日本贔屓だったため、何度も来日してレコーディングを行った。70年代末のダイレクトカッティングが流行った頃、ボーカルでダイレクトカッティングを行った事にもびっくりしたものだった。

さて、しっとりとしたバラードで人気を得たAnn Burtonだったが、実は小粋にスイングする歌い方も得意としていたのだ。
上記2枚の他にお勧めしたいレコードといえば、やはり六本木のミスティでのライブだろうか。今となっては伝説とも言えるジャズクラブでのライブは、残念ながら実際に聴いた訳ではないのだが、在りし日のミスティを知っている人間にとってはレコードを聴けば容易にそのライブの様子が想像できる。
ここでは初期の2枚のレコードにはない乗りが感じられるだろう。

Ann Burton、本名Johanna Rafalowicz。俳優Richard Burtonが好きでこの芸名を使っていたと言う。1989年11月29日、故郷アムステルダムにて没す。
私にとっては初めて女性ジャズボーカルの魅力を教えてくれたシンガーだった。
 

Thursday, November 19, 2009

Beaujolais Nouveau

今年のヌーボーはかなり出来が良いということを11月の初めには輸入代理店の営業に聞いていた。
だが、半ダースを予約して解禁日の前日に届けてもらうような真似は去年までの話。もう解禁日だからって馬鹿飲みはできない。予約の話は断った。
だが何十年も続けて飲んでいたヌーボーを止める事はない。会社からの帰りがけに、ひっそりと1本だけコンビニで買った。

つまみはカチョカバロを薄切りにして、フライパンで焼いたもの。それに黒胡椒をちょっとかけてみる。
妻が一口だけ飲み、残りは私が飲んでしまった。
確かに今年のヌーボーは酸味がさほどキツくなく、柔らかでフレッシュな味わいだ。だが6年前の当たり年はどうだった?もっとボディが厚く、とてもヌーボーとは思えないような味わいだったことを思い出す。今年のヌーボーは、私の中では2003年の次くらいに位置しそうだ。

ところで今年のヌーボーは一般的にはどんな評価なのだろう?
史上最高の当たり年などと言っているのではないだろうな。
これは絶対に自分の味覚、記憶を信じるしかないね。
 

Thursday, November 5, 2009

クールでグラマラス

最近のお気に入りがこの酒、奥播磨純米吟醸芳醇超辛口赤ラベル。
ご近所の酒屋さんの冷蔵ケースの中で、最近一際目立っていた酒だ。
超辛口というだけあって日本酒度は+9度。だが、どっしりとしたボディを持ち、決して辛いだけの酒ではなく、飲みごたえがあり、尚かつキレがあるという印象だ。
クールでグラマラスな女性のイメージだね。
ひょっとしたらこの感じはぬる燗にしても意外といけるのかも知れない。
いずれ試してみるとしよう。

さて、秋も深まり日本酒が恋しくなった季節は、女性ボーカルにもうつつを抜かしている。
今Macで聴いているのは、Ella Fitzgerald。
Ella Fitzgerald & Joe Pass - Sophisticated Lady、1983年の東京でのライブ。
Joe Passのギター1本の歌伴というのもなかなかいいね〜。ほんと職人技というのはこれだよ。
EllaもOpera Houseとか、in Berlinなんかも良いが、晩年のJoe Passとのコラボも本当に良い。

さて、Ellaの名前と歌を初めて耳にしたのは、映画「恋人達の場所 A Place for Lovers」(監督:Vittorio De Sica)の主題歌でだった。映画が1968年だったから、日本での公開は1969年だったか、そんなもんだった。
普通なら席を立って退出する映画ラストのエンドロール、そのバックで滔々と流れる主題歌にじっと座ったまま聞き惚れた。
映画の粗筋も、主題歌もとうに忘れてしまっているが、映画の名前とEllaが歌っていたことはずっと覚えていたのだね。
(今度この曲を探してみよう。)

その10年後には、本格的にジャズボーカルを聴き始め、EllaとSarah VaughanはMy Favorite Singerという訳。
私にとってジャズボーカルと言えば永遠にこの二人なのでしょうね。
Sarah Vaughanについてはいずれ。



YouTubeで見つけた「恋人達の場所」オープニングシーン
もちろんEllaの歌も・・・
(11/8追記)